フィギア基本講座(ボックス)

早稲田大学自動車部
元監督 木村 尚史

ボックスを考える場合、“どのように通るか”という考え方が最も重要となる。
当然、コースや車種に応じてセオリー通りにならない場合も存在するが、基本的な考え方さえ理解できていればその応用にも容易く対応できる。

用語の定義
尚、言葉の定義を最初にしておく。
従来より“順周り・逆周り”という表現を使用しているが、スタート位置によりその回り方は右回りや左回りとなってしまうため、
ここでは“右回り・左回り”という表現を用いる。右回りは時計の進行方法、左回りは反時計回りである。

一般的な注意事項
また、一般的な注意事項として、

  1. 停止する前にはハンドルはニュートラルに戻すこと。
    フィギアでは据え切りは減点となる。
    従って、動き出す瞬間・停止する直前に一気にハンドルを切る必要がある。
  2. ハンドル切るのが遅れてえぐり直す場合、下がるときには少しだけハンドルを戻せばよい。
    例えば、山で10cmえぐり直す場合、車の姿勢も向上するため直線部分の距離でいうと2〜3cm後退させればよい。
    従って、ハンドルを逆ロックしている間に必要以上の距離を移動させている。
  3. ボックスから出る場合、通常ボックス内で確輪したあと、出口が開く。従って、この部分もスペースと考えること。

ボックスの通り方の基本的な考え方を以下に示す。

セオリー1)リアタイヤを動かさない方向

リアタイヤを動かさない方向とは、ボックスに内に円をイメージして、その移動距離が短い方の回り方を選択する。

theo01-ex.gifExample:例えば左図のコースでは、
1)ボックスに内に円をイメージ2)
スタートから対角線を引く3)
移動距離の少ない方向に回る
以上より左回りを選択する。

セオリー2)対角上に確輪時には確輪のしやすい方向

ボックスが対角上に存在する(ボックス内を180°以上回る)場合、必然的に後輪がボックスの中心方向に寄ってしまう。
この特性を利用してボックスの回ると、確輪時に有利な体勢を作ることができる。

それではパターン別に基本的な通り方を以下に示す。

Pattern 1Pattern 2
theo02-p01-00.giftheo02-p02-00.gif
Pattern 3Pattern 4
theo02-p03-00.giftheo02-p04-00.gif
Pattern 5Pattern 6
theo02-p05-00.giftheo02-p06-00.gif

Pattern 1

theo02-p01-00.gif

まず、通り方は左回り(セオリー1から考えれば明らか)。

質問:
このパターンを考える場合のポイントは、スタート後にどこでハンドルを切るか?
具体的に言うと、

  • ゴールのある線を一杯までえぐるのがよいのか?
  • スタートしてすぐにハンドルを切るのか?

という問題である。
試合などを見ていると何も考えずにただハンドルを回わしている者が多いが、恐らくこの問題を意識していないと思われる。

解答:
答えはどちらともいえない。これは現在の試合で設定されているボックスの大きさやハンドルの切れ角に応じていずれの場合も存在する。

それでは、なぜハンドルを切るポイントが問題になるのか?
それは、ハンドルを切る位置よってゴール(確輪)させるときの車の姿勢が異なるからである。

制限のない場合:
ボックスの大きさに制限がない場合や理想的な状況では以下のように、何も考えずに左にハンドルを切って前進し、右に切って後進すればゴールできる。
theo02-p01-01.gif

縦方向が短い場合:
これに対して、ボックスのスタート〜ゴール間の距離(縦方向)が短い場合は如何であろうか?
当然、距離が短いために確輪前にゴール手前で線にぶつかってしまう。
このように縦方向の距離が短い状況では、スタート後にできる限り早くハンドルを切り始めないと、確輪できない。
theo02-p01-02.gif

横方向が短い場合:
それでは、横方向が短い場合は如何であろうか?
スタートしてから前進するときに、十分距離がとれないために次に後進したときに後輪がゴール方向へ向かわない。また、このような状態で続けると、角に張り付いて動けなくなり失格となってしまう。
このように横方向が短い場合は、後進した後で車両の頭を振るスペースを確保するためにもスタート後にできる限りハンドルを遅く切ったほうがよいことがわかる。

theo02-p01-03.giftheo02-p01-04.gif>>>
このまま続けると、
角に張り付いて
動けなくなってしまう
theo02-p01-05.gif

以上のようにボックスの大きさによりハンドルを切るポイントが異なることが理解できると思う。
それでは、何を指標として練習すればよいのか?

ハンドルを切る位置の指標:
このパターンに限った話ではないが、目標はゴール(確輪)することである。
そこで、ゴールからスタートというようにコースを逆に辿って考えてみるとわかりやすい。

まず、ゴール地点からハンドルをロックしてスタートする。
このときの止まった位置へスタート後に車両を移動できれば、そのままゴールできることになる。

従って、練習時、もしくは人が競技を行っている様子、試合の勘付け時間を利用し、そのときのコースに最適なポイントを探し出すことが重要である。
theo02-p01-06.gif
また、上図で示した車両の軌跡は確輪時の限界曲線でもある。即ち、限界曲線よりも内側(黄色部分)に車両がある場合には、確輪は不可能であるということを意味する。
確輪時は限界曲線の外側に車両をコントロールすることが重要である。
theo02-p01-07.gif
実際には外側といっても領域は限られており、後輪が以下のような領域にないと確輪できない。
theo02-p01-08.gif
確輪時の心構えとして、一発で確輪する、もしくは一発で確輪する体勢に車両をコントロールするということが重要である。
しかし、難易度の高いコースなどではなかなか一発で確輪する体勢を作れるわけではない。
そうのような場合の指針として、限界曲線の外側に車両を移動させることが重要である。

これは下図のような状態では、

  1. 前進しただけでは確輪できない。幅寄せも必要になる。
  2. 幅寄せして再度確輪するときに、運転席後輪と助手席後輪を注意して後退しなければならない。

theo02-p01-09.gif

これに対して下図では、

  1. 前進するだけで確輪できる。
  2. 運転席からGOALを見ながら確輪できるので、接輪を気にする必要がない。

theo02-p01-10.gif

Pattern 2

theo02-p02-00.gif

まず、通り方は左回り(セオリー1から考えれば明らか)。
また、えぐり方もリアタイヤをできる限りゴール側へ寄せたいので、線をぎりぎりまで攻めることが重要である。
theo02-p02-01.gif(前輪の軌跡)

注意:

  • 上図で横幅に余裕がある場合、山を越えたらハンドルを戻し線に沿わせること。これにより多少リアを寄せることができる。
  • 確輪時の注意はPattern 1を参照すること。

Pattern 3

theo02-p03-00.gif
通り方は右回り(セオリー1から)、もしくは幅寄せなども考えられる。
但し、幅寄せはかなり切れ角のある車でないと難しい。
ここでは、他のパターンへの応用も考慮し、右回りの立直しのポイントについて説明する。

立直しのポイント:
立直しとは、下図のように右回りから左回りなど車の回転方向を変更することを意味する。
theo02-p03-01.gif(後輪の軌跡)
このときのポイントは、以下の2点である。

  1. スタート位置でロックしておくこと。
  2. スタート後に前進しすぎない。

まず、2)では極力前進しないことを心掛ける。前進すればするほど車両は中央へ移動してしまうため、体制が悪くなってしまう。
1)も同様の理由で、できる限り無駄な前進を省くためである。

それではどれくらい前進すればよいか?

ハンドルの切れ角によって異なるが、スタートから前進し、その後で後進したときに車両が45°以上傾くくらいを目安とする。
また、スタートから前進し、その後で後進したときには、上図の場合、運転席サイドの後輪しか接輪しない。

Pattern 4

theo02-p04-00.gif
このコース図を見て、一瞬でどのように通れば良いか判断できたであろうか?
これを立て直して右回りでなんて判断してはいけない。これはPattern2をそのまま逆にしただけである。
従って、車両の頭を振れる分だけ幅寄せし、そのままフルロックして下がる。
theo02-p04-01.gif
このパターンのようにスタートからゴールの通り方だけを考えてはいけない。
一度スタート〜ゴールを考えたら、次にはゴール〜スタートとコースを逆に辿ることも重要である。

Pattern 5 & Pattern 6

theo02-p05-00.gif(Pattern5)theo02-p06-00.gif(Pattern6)
Pattern 5やPattern 6のような場合、どちら回りを選択すればよいのであろうか?どちらもセオリー1から考えると同じ程度である。
ここでセオリー2を利用する。
セオリー2とはどのようなことを意味しているのか例を示す。

  1. Pattern 5に対して左回りした場合、1回目のえぐりの後で後輪は下図のように中心に移動する。
    theo02-p06-01.gif(1回目のえぐり)
  1. 2回目のえぐりの後で後輪は中心を越え、さらにゴールとは反対方向へ向かう。
    theo02-p06-02.gif(2回目のえぐり)

このようにPattern 5に対して左回りした場合、車両はゴールと反対方向に移動していく。

これに対してPattern 6に対して、左回りした場合を考える。
1回目・2回目まではPattern 5と同じである。
theo02-p06-03.gif(1回目のえぐり)
theo02-p06-04.gif(2回目のえぐり)
異なるのは3回目をえぐった後である。Pattern 5ではゴールから遠ざかっていたが、Pattern 6ではゴールの方向に向かうのである。
theo02-p06-05.gif
以上のようにセオリー2とは、ゴールの方向を向かう回り方を選択することを意味する。
また、右回りをした場合、上記説明のPattern 5とPattern 6が入れ替わることに注意すること。

修正の仕方:
Pattern 5やPattern 6のようにボックス内を180°以上回る場合、コースの大きさにも依存するが2回目のえぐりが終了した時点で車両の体勢がかなり悪くなっている。また、ハンドルを切るスピードが遅いと容易に体勢が悪くなる。

例えば、Pattern 5では2回目のえぐりが終了した時点で以下のような体勢になっている。
theo02-p06-06.gif
このままの体勢で3回目のえぐりに入ってしまうと、角に張り付く可能性が極めて高くなる。このような場合に車両の体勢を修正する必要がある。

車両の体勢の良否を判断する方法として最も簡単な方法は上図のように下がり終わった時点で車両がボックスの半分以上どちら側にあるかを判断する。
この場合、下がった時点で下図の黄色部分に車両が存在していたら修正(幅寄せ)を加えなければならない。
theo02-p06-07.gif
本来、下がり終わった時点で修正を加えていてはタイミングとして既に遅いので、半分を超す前の段階で自分の体勢が悪くなっていると判断し、えぐった後下がるときに同時に修正を加えるとよい。

ここで述べている修正とは“斜めの修正”と呼ばれるもので、ボックス内で最も距離を長く取れる対角線上で幅寄せを行うことである。
theo02-p06-08.gif
以上のように適宜修正を加えることにより、ボックスを何周でも回れるように日頃から練習する必要がある。

BOXIN(ボックスの入り方)

フィギアの規則ではボックスの入り口は4輪通過後に閉じることになっている。従って、4輪通過しなければボックス外もボックスの一部として利用できる。これを上手く利用しない手はない。

立て直し:
ボックスに入る場合、順回りで回る場合は特に何も考慮する必要はない。考慮するのは立て直して入る場合である。
Pattern 3で説明したように立て直しをする場合には、後輪ができるだけ離れないように最小限の前進に止める。しかし、通常の確輪位置からの立て直しではどうしても30cm以上程度離れてしまう。
ボックスINの場合には上手くコース外を利用することによって、0cmにすることも可能である。

以下に例を用いて注意点をまとめる。

  1. できる限り外側から進入。
  2. リアタイヤがボックス入り口をかすめるところでハンドルを切る。
    boxin-00.gif(後輪の軌跡)
  3. ボックスに進入した後はボックスの入り口は閉じているので注意すること。また、下がるときには完全に下がる必要はない。次のえぐりに必要な分だけ下がること。
    boxin-01.gif(後輪の軌跡)

缶またぎ:
4t貨物系のようにホイールベースの長い車両でよく使用されるテクニックとして“缶またぎ”がある。缶またぎとは、下図のようなコースにおいて絶大な効果がある。
boxin-02.gif
ボックスへそのまま進入してもよいが、この後ゴールするためにはボックス内でPattern 5に相当する対角線上の移動を行わなければならない。
boxin-03.gif
そこで、ボックス進入時にホイールベース間で缶をまたぎながら幅寄せを行うのである。これにより後退時にフロントタイヤを振るスペースを作り、一気にゴールまで持っていくのである。
boxin-04.gif

応用

尚、この方法は同じコースを逆に辿り、後退でBOXOUTする場合にも利用できる。
後退でBOXOUTする場合には、フロントタイヤ沿わせながら缶が見えるまで後退するが、缶またぎを使用するとフロントタイヤをほとんど気にする必要がなくなる。


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Last-modified: 2011-03-21 (月) 18:39:32 (2345d)